築地市場は学生の時分から行った非常に思い出深い場所である。
ことに場内の早朝の場内のライトのまぶしさが赤提灯の様だったり、
ひき殺されそうな車と人の往来がなんとも祭りのようで、
行った後はなんだか緊張の糸が切れて心地よい疲れが襲ってくる。
ふらふらと場内まで行っては朝8時の終わりかけの鮪屋からトロを買うのが
蚯蚓の好きな行事なのだが、本日はこの場内にあるカレー屋が旨いという薦めで、
カレーのみを堪能しに来た次第である。
店へ入ると手際よく客を誘導する威勢の良いカウンター内の兄貴が案内をする。
気持ち早朝で働かない頭でメニューを見るも、結局薦めのカレーと
ハヤシのあいがけを発注。
程なくして皿が来た。

見た目良く高く盛られたキャベツはあいがけを発注すると付け合わせで
ついてくるもので、より一層皿の食指をそそる。
混ぜないで食べた方が良い、という気の利く兄貴のアドバイスもあって、
ハヤシから一口。ドミグラソースのコクと言うより素朴なトマトの旨味が心地よい。
口当たりは気持ちさらりとした印象もあるのだが、一口目がうまい。
カレーはターメリック感が昨晩飲んだ蚯蚓の体にじわりと効くような
印象を受けるが、これも一口目がうまい。
食べるほどに朝という食べ慣れない時間帯に己が飯を大量にかっ込んでいる心地が
出てきてしまい、いささか勿体ない気分もあるが、
その早朝から活気ある中で、気の利いた兄貴のてきぱき仕切る店で、
食らいつくカレーは活力そのものを食っているようである。
正直築地界隈は現在街おこしの関係もあってか、
休市場日も営む場外の寿司屋など出てきて、気持ち観光地化してきた雰囲気も否めない。
勿論ある程度一般人が出入りできるようになったからこそ、
蚯蚓もこのように場内のカレー屋で写真を撮ることが出来るのであるが、
本来この市場の食堂を常用する人々のところに、このように入って良いものか、
悩むところである。
東京に住む蚯蚓としては飲食を楽しむだけでなく、
生活の上でもこの築地市場界隈は必要であるという心持ちで、
平日早朝にできれば場内、もしくは場外で買い物をして、活気を貰って、
そのついでに腹が減れば、空いた店で飯を食らうという様な、
この場所の時間軸から逸脱せずに、
界隈風情を時折楽しませて貰いたいと感じた今日この頃である。