吾輩は蚯蚓である。夜を昼を様々な街に縦横無尽に出没するたくましい生き物である。
根っからの外食好き"蚯蚓"の食生態フードダイアリー。

2005年12月31日

特別編・イタリア 〜蚯蚓イタリアへ行く3

本日まずはホテルで軽く朝食を食す。
ナポリからの小旅行気分を愉しむため持参した
クレメンティーニ(種無しオレンジ)やホテルのサービスジュース、
ナッツ数粒ほどを2階のテラスからの景観が心地よかったためそこで頂いた。
クレメンティーニはオレンジにちかい小ぶりのみかんであるが、
果実風味が濃厚で、2個も食べると十分柑橘類を頂いた心地になれる
実に素朴で美味しい果物である。

朝食後、ホテルにクリスティアーナが車で迎えに来てくれ、
早速オリスターノの街中散策へ向かう。
ホテルは厳密にはオリスターノ郊外に位置しており、
刈り取りの終わった麦畑の広野を抜けて街中へ入る事になる。

ホテル朝食.gif

昨日分に記載していないが昨晩夕食の前にクリスティアーナ家を訪問しており、
その際、この島の食べ物の話をした。
有名どころは勿論ボッタルガ(buttariga)で、南部では鮪のボッタルガ、
北部では日本と同じボラのボッタルガを作るらしい。
(鮪のボッタルガは次回この島を訪れるときの課題となる。)
ボッタルガの作るところは見られないか相談したところ、
秋口に全て作業は終わってしまっているらしく次回はその時期に訪れ、
鮪、ボラなど一気に体験したいところである。

その他、名産というわけではないが、サボテンの実をサルディーニアでは食べる
やらヤマモモ(corbezzolo)も食べる、ということで、
それらを食した事の無かった蚯蚓はどうにかしてそれを食べられないか、
クリスティアーナに相談していたのである。

ヤマモモについてはクリスティアーナは市内近くの民家になる木を
見せてくれ、2〜3粒失敬して、頂いた。
渋みと木苺のかすかな風味、酸味、甘味はうっすらと粒の食感が楽しい
ヤマモモをその場で堪能。

ヤマモモのタ.gif

サボテンの実については街中への道中たまたま公園のような雑木林の
脇を通りかかった際、サボテンに季節外れの赤い実がなっているのが
わっと目に飛び込んできた。
すかさず、車を降り収穫。その場で味見したいところであったが、
後での楽しみとした。

サボテンのタ.gif

街中に出て、スーパーマーケットへ。
生鮮食品は日本と同様専門のブースで魚専門の職人が、
氷を敷き詰めたところに鮮魚を並べ、実に美味しそうである。
アンコウや海老、イカ、塩ダラなどこれまた魚も日本と酷似した魚を
彼らは食しており、刺身を売らないものの、
この店の雰囲気は断片的に日本を髣髴とさせる。

肉や野菜も内容は日本と異なるもののほとんど日本と同じであるが、
野菜も基本は量り売りで、消費者がビニールに入れて計測し、
値段とバーコードの記載されたラベルを袋に張る。
日本のほうがむしろその辺りは1個というくくりで済ましてしまうため、
アバウトといえよう。

本日は大晦日とあって、祭日前のスーパーは大混雑。
従ってレジには大変な行列ができていた。
しかし、ここはゆったりした生活を送る西洋人、いらつくことなく
列を作って待つ。
こういった行列を作ってまで待つことを
敬遠する人種なのかと思っていたが、飛行機のチェックインやら
美味しいお店に入るために待つといった時に、
諦めずに並んで待つ「しつこさ」は日本人とさほど変わりないようである。

石造りの街並みはミラノ、フィレンツェ、ナポリと同じである。
強いて違いを言えば、あまりナポリのような高い建物が無いということや、
ミラノやナポリの一角には日本でよく知られる有名ブランド店が
表参道や銀座の如くに林立しているがオリスターノにはそれがなく素朴で心地よい、
という程度で、基本に変わりは無い。

散策の極めつけはクリスティアーナの好きな日本のマンガショップへ
どうやらイタリアの南部のほうは日本のマンガがブームらしく、
マンガショップに限らす、駅の売店などイタリア語訳されたマンガを
高頻度でみかけた。
このようにして午前中の散歩は充実した街歩きを堪能した次第である。
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2005年12月30日

特別編・イタリア 〜蚯蚓イタリアへ行く2

旅の第2日目、ナポリの朝は夕べの雨が嘘であったかの如く、晴れ。
窓を見下ろすと、魚屋と野菜屋だけは朝っぱらから
店を開けていて、街が動き出し始めていることをぼんやりと眺めていると
いよいよカフェ(エスプレッソ)の香りが漂ってきて、朝食である。

DSCF0145.gif

フェンネルなどスーパーで購入したものであるが、
日本のセロリ程度の値段で手軽にいただけるとあって、
この旅で最もよく食べたハーブである。
日本では人参の葉ような細い葉の部分を香草として用いるのを
よく目にするが、イタリアでは茎の基部が、玉葱の如く
白く丸くふくらみ、食感はチコリーとセロリの中間の歯ざわり、
風味はフェンネル独特のアニスの香りがして実に美味しい根菜である。

モッツァレラチーズはスーパーで買うとそれなりで、
日本の店で買ったものと大差が無いが、
パンはナポリのどこでも粉の風味が感じられる素朴でありながら、
うまいものである。
この後鳥を丸ごと煮た旨味たっぷりのスープを頂き、
朝からしっかり食事を摂る。

食後に知人が、この家の住人の食べるナッツを勧めてくれた。
これが今回の旅で、初めて知る特筆すべき食の1つとなったのだが、
ナッツを”ナッツ割りバサミ”のようなもので割り、
時には干しイチジクと共に食べる。
中でも蚯蚓が気に入ったものはどんぐりの実で、
マカデミアナッツほどではないが脂肪分を含み、噛むほどに
よく漬かった醤油にんにくの風味のようななんとも独特の
美味しさを有する。
またさらに、これを干しイチジクに軽くはさみ頂くと、
今度はイチジクの甘味と風味とが混ざって、
プロシュートを食べているような感覚にさえ陥る。
干しイチジクも日本に入る大半の中国産のものより、
しっとりしていてイチゴのような風味があるため、
これを単体で頂くのもなかなか。

プレートにざっと敷き詰め、割バサミ等と一緒に置きかごの蓋がされて
食卓の脇に置かれており、日本のコタツの上のみかんの
ように口寂しい時や食後に頂くのであろう。

DSCF0146.gif

腹ごなしに近くを散歩をすると先ほど窓から見えた魚屋には
鰻が水槽で意気揚々と泳いでおり、これは一般家庭でどのように
食されるのだろうかと気になりながらもすぐに部屋へと戻り、
早速、サルディーニア島へ知人と出発した。

島へはナポリの空港から2時間弱で着く。
空港では知人の友人のマウラがサプライズで出迎えてくれ、
空港から北西に位置するオリスターノという街へ向かった。
途中、蚯蚓の顔ほどの大きさのサンドイッチを頂き、
たった数時間でアメリカに来てしまったのかと思ったが、
食べるとチーズはさほどでもないが、パンとハムがうまい。

DSCF0170.gif

知人の関係上、ここでも臨海実験所に立ち寄っえたのだが、
そこで、今回の旅で一番お世話になったクリスティアーナとも合流。
マウラとは1月1日の夜に食事でもしようということで別れ、
雨の降り始める夕方ごろに本日泊まる宿へと
クリスティアーナ、クリスティアーナの友人のアレッサンドラ、
知人、蚯蚓の4人で向かった。

夕食には早い時間ということでホテルで一休みし、現地時間の8時ごろ、
歩いていけるお勧めのリストランテへ食事をしに向かう。
エントランスは照明など実に温かみがあって居心地がよさそうである。
中に入ると、左手にブッフェ形式でアンチパストが並んでいる。

DSCF0176.gif

アンチパストを盛り合わせにして、ワインを発注。
クリスティアーナやアレッサンドラは十分に酒を飲んでもよい
年頃なのだが、夜だろうと昼だろうと飲まないらしい。
ということで、知人と蚯蚓で一本を飲むことになる。

サルド特有のパンの原型とも言える薄いトルティーヤ風のパンを
ボッタルガ入りのパテをつけながら頂き、待つ。

DSCF0178.gif

「このパテにはボッタルガが入っているから是非ためしてみて」
とか、「何人なのか?」など、ざっくばらんに店の人と会話する間に、
アンチパストが続々運ばれてきた。
さらに4人分盛られていて、それを好みで忙しく己の皿にめいめい取り分ける。

DSCF0179.gif

あめ色の銀杏のような見た目をしたチッポリーナ(CIPPOLLINA)は玉葱で、
玉葱特有のカラメル化した香ばしい旨味とマリネされた柔らかい酸味が
心地よく、カラメル化させたときの油分が程よく旨い。
ナスもまた然りで、旨味が苦味になる直前の火の入り具合と、
油分で旨味十分な美味しい一品。

サーモンや蛸はレモンでマリネされているのだが、
イタリアの皮の分厚い素朴なレモンは酸味より果実の風味が
強いのでその美味しさが品と化して、美味しくいただける。

ムール貝のグラタンはボッタルガがこれまた混ざっているので、
風味と旨味がしっかり来て、しっとりとして美味しいのだが、
どちらかというと冷えてしまっていて、常温で食べたかった一品。

そのほか、どの皿にもサルディーニア島の地場の素材が
入っていて楽しめた。

次に、パスタやメインをというときに、
昼に頂いたパンを悔やむほどに既に腹が満杯で、
マナー違反であるが、アンチパストのみでその他全てを飛ばして、
ドルチェへ。

チーズの入ったパイに蜂蜜をかけ、
サンブーカのようなものをかけたドルチェは、
表面の蜂蜜の風味と中に入ったレモンの風味が混ざって、
そこにチーズの塩気と伸びる乳脂肪分がパイ生地と
よくあっておいしい。

結局、深夜ホテルへ戻ることになったが、
サルド特有の食探しの旅の第一日目としては
かなり満足のいったものであったと思いつつ、床についた。
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2005年12月29日

特別編・イタリア 〜蚯蚓イタリアへ行く

本日より知人を訪ねにフランス経由で、
一路イタリア・ナポリへ渡航し候。

ナポリへは2年ぶり、2回目の訪問である。
現地29日午後、空港で数ヶ月間ナポリに滞在予定の知人と落ち合い、
早速市街へバスで向かう。

石造りが基本のヨーロッパの景色は異国情緒たっぷりで、
これだけでも日本のことなど忘れてしまえるほどである。

ことに天気に関しては山の天気の性質をもっているようで、
夕方ともなると、断続的にわか雨が石畳の地面を濡らし、
街の風景の匂いや音、景観に重要な役割を果たしているように感じる。

橙色の市街バスを乗り継ぎ、目的のバス停で降りると
定石どおり、早速の雨である。
不精で傘を持たない蚯蚓は帽子を被っていてこれ幸いと、
足早に海沿いの公園内にある臨界実験所へ向かい、
以前お世話になった方に軽く挨拶を済ませ、
早速知人と旅の疲れを癒す食事へと出掛けた。

さてどこに食事しに行くかという時に、
結局雨も降っていることだし、近場でお勧めの店を
先ほど軽く挨拶したイタリア人にたずねる事にした。
かなり場当たり的にみえるが、彼の実家はフォッジャ(FOGGIA)というイタリア東側の
街にあり、そこで以前彼の自慢のマンマ料理を頂いたところ、
普通のリストランテ顔負けの郷土料理を頂き、舌の信頼度は高いのである。

「美味しいピッツェリアを教えてくれ」という問いに対し、
彼は「Pizza Margehrita」という店が美味しいと紹介してくれた。
しかし、ナポリピザといえば、「マルゲリータ」。
その名前をそのまま店の名前にしてしまうのはあまりにも安易ではないか、
という疑念と「近場で」という妥協した自分への瞬時の判断の後悔が
渦巻きながらもいざ店へ。

店構えは石造りの建物も手伝って、実に良い雰囲気であり、
いささか不安が解消され、いざ店内へ。
お勧めのマルゲリータのDOCブッファラ
(モツァレラチーズが水牛のもの)と鰯のマリネとワインを発注。

DSCF0142.gif

残りの不安は出された皿の香りと共に解消された。
ふんわりと焼かれた生地はもったりとして心地よいバジルの香りを放っている。
ナイフとフォークでピザ生地を切り分けいざ一口。
水牛のモツァレラチーズの旨味とさわやかなコーンのような香りを放つ
生地が食べるほどに口の中で混ざり合って、粉の甘味を感じる美味しい
”炭火の香り漂うもちパン”と化す。
ここにトマトの言うまでも無い美味しさが協同して率直な美味しさを
感じさせるピザであった。

DSCF0140.gif

気分良く食事を終え、一路、寝処へ。
今回は知人がお世話になっているイタリア人のお宅に、
さらに1匹ご厄介になるという次第で、ナポリの一般家庭で荷を解くこととなった。

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2005年09月25日

特別編・江ノ島 〜海っぺたで呑む一日

本日気の置けない飲兵衛達と連れ立って江ノ島へ足を運び候

昼に長谷駅で集合し、まずは店構えも立派な老舗の力餅家へ。

鎌倉 力餅.gif

すぐ側の海岸を眺め、その日が賞味期限の餅を頂くと
もち米のひねた香りが実に美味しさとのびやかな甘味のこし餡が
心地よい美味しさ。
土産には少し日持ちのする求肥の力餅を購入。

続いて江ノ電にて江ノ島駅へ。
今回の呑みツアーの道先案内人に連れられて、商店街を抜け、
江ノ島へ渡る橋へと向かう。
その橋の途中にこの屋台はある。

江ノ島 屋台.gif

店に入るとおでん屋台で既に数人の客が夜さながらにおでんと酒を
引っ掛けている。
早速はんぺんと白滝を発注。
程なくして、皿が出た。
塩味が強めのおでんで、味はほどほど。
取り立てて美味いというわけではないが、昼間から海を横目に引っ掛ける
心地よさに疲れ気味な蚯蚓の気持ちは一気によみがえる。
この店では、手製のらっきょうの塩漬けを発注でき、
それと、とうふがなかなか。
サザエの浜焼きも発注できるので、
それと日本酒でということも可能である。
なんだかんだで、結構な飲み食いをしたが、屋台価格で勘定。

鎌倉 おでん.gif

夕日を眺めながら、いざ江ノ島本島へてれてれと腹ごなしに散歩をする。
灯台からの夕日はほろ酔い気分もあいまって、
長旅に出て眺めたかのような非常に心打たれる景色である。

江ノ島 灯台.gif

さらに島の奥に進み、次は海の見える座敷席で、
釜揚げしらすだのアジのたたきだの焼きハマグリだのを食らいながら、
とりとめない話に花を咲かせて時が過ぎていく。

江ノ島 海の見える店.gif

江ノ島 鯵のたたき.gif

気づけばすっかり最後の客になっており、
暗い島道を抜け、橋の袂付近のスマートボール屋で一遊びした後、帰路へ。

特筆すべきおいしさの出会いを求めた食べ歩きというよりは
むしろ気分転換を重視したのんびりツアーであったが、
飲む面子と店の雰囲気のお陰で、充実感さえ感じるひと時を過ごせた日であった。
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2005年09月03日

特別編・名古屋 本場ひつまぶしとはこれ如何に

愛地球博を見ついでに、人生で初めて名古屋という土地を観光した蚯蚓である。
休日の街全体の印象は東京よりも活気があるのでは、と一瞬感じるほどの盛況ぶりで、
一泊二日の小旅行では満足しきれない程の、気になる店、料理だらけである。

ここはひとつ初心者らしく観光ガイドブックを片手に老舗ひつまぶしを食らいに
車を飛ばし、苦手な行列にもそれらしく並んで、店へ入る。
旅館とも言うべき大きな日本家屋の座敷部屋に通され、
流れに任せてひつまぶしと白焼きも発注。
はじめに白焼きが出された。

特別編 白焼き.gif

表面が薄いきつね色に焼かれた白焼きは、その表面に味醂が塗られているのか
サクッという食感と甘味がふんわり口の中に広がり、そこに芳ばしい香りがきて、
非常に旨い。
生姜の少し入った塩のタレにつけて食べるのも一興だが、そのままでも十分に旨く
この白焼き、東京のものではあまり口にしたことがない焼き物である。
鰻は結構大振りな肉の厚みもほどほどにあるもので、肉の旨味もきてなかなか。

初めてのひつまぶしは、「はじめそのまま頂き、2杯目は薬味を、
3杯目は茶漬けに・・」などとお品書きに書かれた指示のもとに頂いてみた。
さらりとした甘味が旨いタレの鰻は最後の出汁をかけた茶漬けにすると
その鰻が持っていた香りや脂の旨味がどこからともなくあふれ出てきて、
これが一番印象に残る。
一緒に出される吸い物も塩のきつくない、とろろ昆布風味の品のいい味で美味しい。

特別編 ひつまぶし.gif

正直、ひつまぶしのタレのきいた鰻より、白焼きで頂いたほうが
鰻本来のおいしさとほのかな味醂様の甘味が、ぐっと来て蚯蚓個人は好みであった。
とはいえ、そのタレの方の鰻の茶漬けは確かにその鰻の底力を広げる食べ方で、
実に良い食べ方であると感じた。

その他、宿近くの中心街で頂いた、味噌酢で頂いたところてんや手羽先など、
名古屋独特の食文化を短い時間ながら垣間見ることができた。
以外に東京から出向きやすいことも分かったので、今後は機会を見て、
名古屋食い倒れ特別編を記事にしたいところである。

この店の場所はこちら
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2005年05月08日

特別編 〜蚯蚓山口に行く (イタリアン)

本日夜に久し振りに洋物を食したくなり、
町歩きで気になったイタリア料理店へ足を運び候。

オープンキッチンでカウンター7席、テーブル席があり、
ガス、水まわりだけでなくエスプレッソマシンなど、
設備は充分すぎるといっても過言でないほど立派なものである。
その贅沢な設備を中年には至らない年回りのシェフが一人で切り盛りし、
ホールのサービスも行う。

夜のメニューは「おまかせコース」のみなので、こちらの決める事といえば、
ワインの種類を決めるくらいである。早速ワインを発注し、皿を待つ。
手馴れた手さばきでパンを温め、一皿目のイベリコ豚の生ハムを出す。
少々行き過ぎ感もあるが、口に入れるとこなれたナッツの香りと
ハムのひなびた香りがきてパンや赤ワインと合う。
パン自身は皮部分が厚めでぱりっとしていて心地よく粉の風味も良い。

コジコジ イベリコ豚ハム.gif

一皿目はアボガドとはっさくと鯵の皿で、塩梅良くマリネされた鯵が
アボガドと一緒になることで味に深みやコクが出て、
まったりとしながら旨味のある一口になる。
これをはっさくと一緒に食べたときは柑橘類の酸味と甘味が絶妙に溶け込んで、
口あきることなく、むしろ後を引く具合でどんどん頂ける。

コジコジ アンチパスト.gif

ウズラのミンチのパスタは軟骨を混ぜてひき肉状に叩いたウズラの食感が、
つぶつぶこりっとした形容しがたい絶妙な食感のアクセントとなって、
パスタのおいしさに一華添える感覚になる。
定番のパルミジャーノで風味や旨味、塩っ気を増して濃厚な味のまとまった一皿になる。

コジコジ ウズラパスタ.gif

その後、筍のリゾットはガーリック風味のパンチの効いた一品を頂き、
メインのラムチョップ。横にゴボウのポタージュが付く。
ラムチョップは肉のベストな焼き時間というよりは少し焼け気味なのが気になったが、
元々の肉がおいしくて、さらりと食べられてしまう。
ゴボウのポタージュもゴボウの土の風味が良く出て
舌触りに、多少ざらつきがあるものの
素朴でいて濃厚な味がダイナミックで良い一品。

コジコジ 肉.gif

ドルチェはぱりぱりのクレープ包みであるが、案外あっさりしたカスタード風味のソースに
水分を吸ってくたっとすることなく、ぱりっとほどけるクレープが甘味の苦手な蚯蚓でも
カフェラテと共に素直に楽しめた。

コジコジ ドルチェ.gif

ここのシェフは山口県出身というわけではなく、
東京は六本木のちょっとした有名店で一時働いた経験があるなど、
都会での仕事経験を経て山口で店を開いているとのこと。
本腰を入れ始めてまだ間もないという割にはアンチパストなどの皿のまとめ具合など、
個人的にはとてもセンスを感じるものがあった。

はじめは単品で発注することも可能なオステリアのようなスタイルで
こよなく仕事帰りの気分転換の店として気軽に使ってもらおうと努めたらしいのだが、
外食文化のないこの地域では中々そのスタイルでは難しく、
現在のコース料理を出すスタイルでなんとか切り盛りしているらしい。

商店街には東京や大阪の都会でデザイン関係の影響を受けたであろう若者達が、
相次いで雑貨屋や服屋を出店して、一種の都会の様相を呈し始めている。
にもかかわらず、都会の生活スタイルの感覚はこののどかな土地柄には不必要なものなのか、
もしくは生活スタイルの感覚までもは影響されずに帰郷したのか、
ともあれ味のトレンドや食材を入手可能な東京の郊外で店を構えれば、
前途有望な店がこのままでいることは残念でならない。

しかし、そんな諸々の話をシェフとざっくばらんにしていると、
彼曰く、「いずれはこの新鮮で豊富な食材を入手できる土地の利をさらに活かし、
良質のハーブや野菜を自分で育てて、それを料理に盛り込んで行きたい。」
日々の困難をクリアするだけでなく、志をもって仕事に望む姿勢に、
また山口を訪れた際は是非、伺いたい店であった。

■本日訪れた店
cosicosi(コジコジ) 山口市駅通り1-7-12
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2005年05月07日

特別編 〜蚯蚓山口に行く (町歩き編)

本日は町歩き全開である。

山口の商店街の散策を本日も行い、そこから歩いて湯田温泉まで向かうことにした。
気になる茶屋を早速見つけ入ろうとしたが、満席のため諦め
すぐ脇に寿司やという看板を見つけ足を運ぶと、
店で食べさせる寿司屋ではなく押し寿司の持ち帰りの出来る寿司がぽつぽつ陳列されている。

山口 寿司入り口.gif

老夫婦の営むこの店、奥でつくっているようで、店の奥の調理場が雰囲気があってよい。
そこで、穴子寿司を一個購入。行儀悪く歩き食いをして散歩を続けた。
穴子は薄く切ったものを乗せたものらしいが、芳ばしく焼かれていて田麩の甘みと合う。
もっちりと炊かれた寿司飯は酢が効いて具の甘みと融合すると実に美味しい。

山口 寿司.gif

商店街散策を続けると山口県産の有名な日本酒「獺祭」の蔵元と仲の良い酒屋を発見し、
店の自称おばばと意気投合し、ラベルのない、無濾過の珍しい獺祭を勧められ、
東京土産に発送してもらった。
また獺祭のビールがあったので、こちらも行儀が悪いと感じつつも店で頂き、
おばばとの会話を楽しんだ。
日本酒の仕込み水で造られたビールは水の美味しさが感じる香り高く豊かな味のする
地ビールで、よく地元名産を造るために製造した強引な地ビールとは一線を画した
美味しいものであった。

ほろ酔いのまま気分良く湯田温泉まで歩いて出て、人並みな観光もしつつ、
町歩きをしていると、「無角和牛入荷しました」といった手作りポスターが掲げられた、
小さな肉屋を発見。
聞けば、無角和牛は大正時代にアバディーンアンガス種という欧米産の牛と黒毛和牛を
掛け合わせた種で、今では山口県でしか生産されない県を代表する特産品とのこと。
蚯蚓はガイドブックで目にした、見島牛、見蘭牛を今回萩で食べたいと思っていたのだが、
生産数の少なさや萩祭りの混雑期で食べることを断念していることもあって、
この牛を食べることで、せめてもの自分の心の埋め合わせになるかと感じて、
ヒレとロースを少量頂くことにした。

山口 無角和牛.gif

残念なことに、店は精肉専門で、そこでは食べられないので、
後に知人宅に世話になって焼いて食べたが、
ミディアムレアで焼いた際に出る血が爽やかでいて甘みがあって、
これがその肉の美味しさを象徴するもので、脂身の旨味は勿論、
赤身の部分も美味しい牛であった。

そうこうするうちに昼食の時間となり、
既に予約をしていた地元の人の薦めの料理屋へ出向いた。
料亭風のたたずまいで、この店も個室だけのようである。
通された個室は初日の寿司屋ほどのこぢんまりした雰囲気のよい部屋で、
お抹茶で歓待される。

水野 入り口.gif

既に発注してあるコースがまず膳で運ばれた。
花びら風に盛られた鯛の刺身は普通のものより厚めに切られており、
歯ごたえ十分で甘みも旨味もしっかり来て実に美味しい。
揚げ物は筍と海老の入った練り物というかしんじょうを一緒にして揚げたもので、
筍の穂先の甘みや香り、栗のような美味しさとしんじょうの旨味や食感が一度に押し寄せ、
何も付けずとも実に贅沢な味わいで楽しむことが出来る。

水野 はじめ.gif

その他、鯛のお頭と尾の部分を甘く煮付けたものや、
馬鈴薯を餡にしてカニクリームを包んで、
芳ばしい胡麻の甘味噌を一見大根の田楽風にした洒落たものなど、
どれも見た目に楽しく、それでいて味わいが複雑で美味しいものであった。

水野 馬鈴薯椀.gif

帰りも歩いて戻ったのだが、途中酒屋のおばばの薦めの山水園の露天風呂に立ち寄って、
歩き疲れを癒してから山口駅へともどった。
土産を買って、美味しいものを食べ、温泉を堪能するといった、
言葉にするとありきたりではあるが、
人のよいおばばとも出会え、思い出深い充実した一日を過ごすことができた。


本日行った店

押し寿司     風味堂 山口市本町1-4-3
おばばの酒屋   アサヤ 山口市中市6-21
湯田温泉の料亭   水野 山口市葵2-6-41   

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2005年05月06日

特別編 〜蚯蚓山口へ行く (益田編)

本日津和野を過ぎ、島根県の益田まで足を運び候。

電車に揺られ、片道約2時間の小旅行である。
津和野のような街の一区画が小京都といったところではないのだが、
古い神社や寺が散在するちょっとした観光地である。

午前中は市内でのんびりしていたこともあり、益田へ来たのはもう昼も十分過ぎた頃。
タクシーやバスを駆使したり、延々歩いて神社お寺をまわり、
もう日が落ち、列車の時間が気になる頃、
駅方向へ向かうタクシーの運転手のお薦めの店で夕食をとることにした。
駅からは少し外れた田圃が目の前といった場所で民家の中を改築し、
店にしたといった雰囲気。
入り口が2階で靴を脱ぎ、階段を下りると生け簀やカウンターが目に飛び込む。

益田 遂倏.gif

席は基本的に個室なのでほりごたつ式の座敷部屋に案内され、そのまま注文を行う。
時間もないことから刺身とウニ丼定食を発注。
すぐ出る小鉢も併せて発注し、ビールを頂き一息つく間もなく小鉢や刺身が来た。
タコはなかなかであるが、薄づくりの鯛、その他は今ひとつぴんと来ない。

益田 お造り.gif

ウニ丼は大中小とウニの量の違いで3種類、写真は中であるが、ご飯が平盛のため、
ウニが少量に感じる。
ごまだれをかけていただくと確かに旨味十分なウニを堪能できるが、
海苔が多すぎて味がぼける。
豆腐は豆から作った完全手作りで、薪のような燻した感じの香りがしつつ
濃厚な豆の味がして、食感はなめらかというよりは、
おぼろ豆腐のようなふんわりしたものに少しざらつきがある感じで
素朴でいて芳醇な味わいで実に美味しい。
これらを少々あわて気味に頂き、駅へはせ参じ、一路山口へと向かったのであった。

益田 うに丼.gif

ここ益田は海にほど近い場所にあるところで、正直生け簀を設けず、
新鮮な魚を出すことも、知恵と工夫によっては容易なはずで、
民家づくりの雰囲気はあるものの、
料理は見た目は良かれど仕事は普通の居酒屋と同等、価格等を考慮すると
今ひとつうなずけないところがある。

山口市内だけでなく、ここ益田にも雪舟の庭があるということもあって、
足を運んでみたが、山口のものより観光っけがなくひっそりとしたたたずまいで
心静かに拝観できる。
桜や紅葉以外にもツツジの良い季節も楽しめる庭の造りであったせいもあるが、
その他の建物や襖画、掛け軸なども個人的には趣を感じ、市内のもの以上の好感が持てた。
日帰りするには夜7時半出発の電車に乗らなければならないという制約もあって、
ゆっくり出来なかった感もあるが、この街にはまたゆっくり出来る際に
足を運んでみたいものである。
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2005年05月05日

特別編 〜蚯蚓山口県へ行く (市場編)

本日は山口の知人宅で市場で仕入れたものを堪能す。

公設市場が商店街の近くにある。
築地とは異なり早朝からという漁港の市場とは違うが、
このゴールデンウィーク期間中も通常のように営業するということで、
山口で獲れる魚を見る為に市場へ出向いた。
蚯蚓一行が出向いた昼ごろともなると、家の食事の為の買い物にきた主婦が
店を吟味している光景をよく目にする。

市場 魚.gif

野菜や惣菜屋、肉屋、鰻屋など多岐にわたって店が連なるが、多いのは魚屋である。
丸ごと一匹という売り方から刺身になった状態まで様々にして売っていて、
ある意味街の魚屋の集合した市場風スーパーといった印象を受ける。

「1皿180円、3皿500円」という東京では閉店時間の間際でさえも付けない値段で
当り前のようにして刺身が売られている。
この東京でいえばたたき売りのような価格を見て、どうにも食べてみたい魚は全て購入。
野菜や薬味類も市場で調達して済ませた。

時は何時しか夕刻、調理は知人に任せ、食卓には次々と料理が運ばれてきた。
刺身は瀬つきアジ、鰯、タコ、アナゴのあらい、メジマグロ、五島産生マグロ、
メンタイ、ふぐ、玄海灘産ウニ等。
早速いつもの山口の醤油で堪能、味は子ぶりながら脂が乗って甘味が強い、
鰯は身はそれ程引き締まっていないがいりこのほろ苦さと香りがわずかにあって旨い。
アナゴのあらいは昨日の鮎のせごしほどではないが、身のむちっとした感じと、
江戸のものより濃厚な味わいが印象的である。
マグロは醤油との相性はいまひとつなのだが、カツオの如く爽やかでいながら、
旨い赤みの味が来る。
五島産のマグロはこれに少し脂が乗っているが、中トロのものとも印象の違う
脂の風味である。

山口 刺身.gif

メンタイ(スケソウダラ)は食感が悪く、おいしくない回転寿司屋で出される
ぐでぐでのえんがわのようなくたっとした水っぽい食感で、今ひとつ美味しさが見出せない。
薄く造って、しゃぶしゃぶにしてポン酢で食べるなど、工夫した方が美味しいかもしれない。
タコは塩で洗っていないのか、色は茶袴色で今ひとつであるが食感味ともしっかりして
噛むほどにおいしい。

山口 メンタイ.gif

ふぐも一見すると東京と異なる風体で、市場で確認しなかったが、
恐らくトラフグではないふぐのようである。
しかし、トラフグより身の旨味が強くて薬味や山口の醤油に負けない味わいを持っていて
個人的にはこのふぐを旬な時にもう一度山口を訪れて食べたいと感じたほどである。

山口 ふく.gif

野菜はゴボウの塩ゆでして一つは歯ごたえと風味を活かした白ゴマ汚し、
笹がけにして甘酢で山口風にしたものの2種をいただいた。
塩茹でのものはゴボウ特有の土の香りと塩味がバランス良く”シャクほく”した歯ざわりに
つられて噛むほどに風味が増してこれがゴマの味でコクが出て実においしい。
それに対して甘酢のゴボウはしゃきしゃき感が一層前に出た心地よさと甘酢の酸味が
ひきたった感じで寿司の巻物でも食べてみたい気持ちになる。

山口 ごぼう塩だき.gif

山口 ゴボウ甘酢.gif

特筆すべきはコシアブラのてんぷらである。
ヨモギのような濃い抹茶の良い緑の香りがふわっときて口の中ではらりとほどけ、
実においしい。

山口 コシアブラ.gif

その他ふきを茹でたもの等も美味しかったが、
いずれも素材の美味しさを極力いじらず引き出すプロ顔負けの知人の力量に感謝しつつ、
山口県の食材の豊富さをしみじみと感じた夜であった。
posted by 蚯蚓仙人 at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月04日

特別編 〜蚯蚓山口県へ行く (自然編)

本日津和野と山口の中間に位置する長門峡へ自然を堪能しに足を運び候。

駅から線路に沿った車道を渡り、ひと川渡ると山間を流れる大きな川に沿って、
舗装されていない細い山道がある。
長門峡とはここをひたすら川沿いに行って来た道を帰る往復約10キロほどの渓谷である。

長門峡 景色.gif

山口から日帰りできる場所というと秋吉台が有名であるが、
このゴールデンウィーク期間中はおそらく人でごった返しているはずで、
それでは折角の雄大な自然をゆったりと堪能できないと云う事で、天邪鬼な蚯蚓は
敢えてこの地を歩く事を選んだ次第である。

早速歩き始め、最初は雄大な川の流れを見て楽しみ、
植物の写真をしゃがんで撮影するなど、己の思い描く自然とのふれあいを
堪能していたが、道の中途辺りを過ぎた頃には、地面とのにらみ合い、
もしくは小さな下り坂が見えると喜び、曲がりくねって先の上り道にがっかりしたりと、
一喜一憂し、いつの間にか自然との闘いが己の根性との闘いに変わってしまっていた。

1時間以上歩いて、ようやく終点の折り返し地点にたどり着いた。
しかしそこにはバスやタクシーといった車を拾えるような雰囲気は皆無である。
とにかく老体にムチを打ち、歩いた都会の蚯蚓は川沿いの茶屋で
食事休憩を取ることにした。

この川では恐らく取れていない鮎が生け簀で悠々と泳いでいる。
この類の茶屋で失敗して美味しくもないのに
妙に高い鮎を食べた経験のある蚯蚓としては、不信感全開で入店。

しかし広い座敷に並べられた机を適当に選んで胡坐座りし、窓に目をやると
空は快晴、崖には新緑の木々、真下は川といった絶景が目に飛び込んできた。
ビールで喉を潤し、しゃきっとしたところで、料理を発注。
空腹も手伝って、塩焼きの鮎定食以外に味噌焼きの鮎、鹿刺しなど多目の発注である。
程なくして定食が来た。

長門峡 店から景色.gif

写真右上の角の皿が「せごし」で、山口の醤油で輪切りにされた生の鮎刺しを頂く料理。
実に鮎の独特なよくいう「きゅうり臭さ」を上手く醤油が持ち上げて、
独特でありながら美味しい珍味となる。
また、食感が軟骨のような、身の引き締まった白身のような
ぷりっとした中にこりっというような軽い絶妙な歯ざわりが合って非常に良い。

長門峡 鮎定食.gif

塩焼きも炭火で焼いているようで、塩梅良く香りも中々で美味しくいただけた。
みそ焼きも山椒味噌になっており、焼き魚の香ばしさと白味噌の甘味が来て
それでいて口爽やかに頂ける。
また小鉢に鮎の甘露煮が入っていたり、更にサービスで稚鮎のフライも出てきて
生け簀で飼育された養殖鮎ではあるものの調理のお陰で心地よく食事を堪能できた。

長門峡 鮎みそ焼き.gif

鹿刺しは残念ながら地場のものでもなく、冷凍であったが、
またもや山口県マジックの美味しいポン酢の効果で、それなりにいただけた。

長門峡 ュ刺し.gif

この茶屋のお陰で憔悴しきった蚯蚓の心にも朝方ほどではないが、
勢いが戻ってきた。
しかしこの老体に行きと同じ体力が残っていない事をやや明朗になった頭で計算し、
決断した蚯蚓は茶屋にタクシーを呼んでもらい、長門峡歩きは片道での挫折と相成った。

また長門峡の駅に戻ればよいのに出来心で隣駅で降ろしてもらうことにした。
この駅がまたまわりに全く何もない駅で、1時間の待ちぼうけにはなかなか辛抱がいった。
このような贅沢な時間の使い方も旅の一興と思ってかえるの鳴き声を聞きつつ、
人っ気のない田舎の風景を堪能した一日であった。

posted by 蚯蚓仙人 at 19:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月02日

特別編 〜蚯蚓山口県へ行く

蚯蚓空を飛び、一路山口県へはせ参じ候

山口市内の知人を訪ねるべく空路で県内入りした次第である。
バスや電車を駆使し、山口県庁などがある山口駅へ到着。
ここを拠点とし、長期休暇中は特別編として記事を書く予定である。

山口駅は1両か2両ほどの電車が行き来する、県庁所在地の割には簡素な場所で、
ビルという建物が基本的に存在しない、平坦な建物の印象を受けるところである。
従って駅に降り立ち、風情ある看板などに目を配りながら、
改札を出るだけで、旅に出たのだ、と実感するのは容易である。

山口駅.gif

早速県の名士が足を運ぶという寿司屋へ。
1階はカウンター席や4人用の個室、2階は大広間となっていて、
どんな来客にも対応できるようになっている。
魚の包丁を振るうのはカウンターの中にいる白灰色の長髪を
後ろで一本にまとめた姿の印象的な親父のみで、
給仕は地元県大生の女性や奥さん思しき人たちで、忙しそうに店をまわしている感がある。

今回は旅ならばということもあって、贅沢にお任せのコースを発注。
早速お通しがきた。

中谷 お通し.gif

お通しは鮪や銀杏の甘露煮で結構甘みがあるが、白髪葱と小口の青葱の両方の香りが
その甘みを断ち切って、そこにビールが良く合い、甘みと苦味の定石のうまさが来る。
お通しをつまむ間に、刺身が来た。
鯛の白身も肉厚で歯ごたえ甘み十分。
サザエも海草をしっかり食べている健康的な味わいのもので、
かむほどに海の潮の味わいと海草の旨みがして日本酒が進む。
サヨリの昆布〆などもあるが、これは東京の凝った仕事の味に慣れてしまっていて、
少々仕事不足な印象がある。

中谷 お刺身.gif

イカは刺身でも頂いたが、出汁と海苔と山葵と小口葱の小皿でも楽しんだ。
小皿の方は一瞬湯通ししてあるのか、甘みや弾力が一層強く感じる一品。
天ぷらのアナゴは小ぶりではあるものの、肉厚で歯ごたえが良く旨みが強い。
江戸前も美味しいが、それに勝るとも劣らない美味しさがあり、
山口のアナゴの美味しさは蚯蚓の新しい発見となった。

中谷 アナゴ天.gif

特筆すべきは醤油である。
おそらくこれはこの店独自ということではなく、この地方全般に言えることなのだろうが、
甘みや旨みを強く感じる醤油で、少々クセの強い刺身でもこの地域の醤油を使うと
そのクセが良い方向に転じたり、程よく緩和されたりして結果的に美味しくなる。

濃い口の味に引っ張られすぎると、口が飽きたり、
魚本来の味わいの微妙な差異がわからなくなるなどして、いささか歯がゆい気持ちになるが、「この魚はどんな味で・・・」という体言化する意識を捨てて、
うまいものをただただ旨いと堪能する場合にはうってつけである。

ということもあり、普段塩で天ぷらを食べることの多い蚯蚓も、
軽く塩で頂いた後は、その醤油で作られた天つゆで穴子のみならず野菜までも
しっかり頂いてしまった。

しかしながらこの醤油を用いて甘辛く仕上げてあるメバルの煮付けは
生姜の辛味で甘みを引き締めるといったことなく甘みが更に加えられており、
甘味の苦手な蚯蚓には食べづらい感があったが、
メバルの身が鯛のような香りと引き締まった身の食感でなんとも絶妙においしくて、
煮汁を避けつつも、結果的に一匹夢中になって食べてしまった。

中谷 メバル.gif

〆のにぎりは江戸前や流行の繊細な寿司を食べ歩く蚯蚓としては、
穴子のツメの甘さも手伝って、記事にするには辛口になってしまうところである。
しかし魚や醤油の素材の良さ、具沢山の茶碗蒸しなど、
この旅での興味深い発見を予感して、おもわず見知らぬ町の夜道を散歩してしまった。
そのような少々贅沢な旅のはじめに相応しい店である。


本日訪れた店
寿司 「中谷」
場所はここです
posted by 蚯蚓仙人 at 11:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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