蚯蚓の思い描く洋食を出す店を求めて、人形町の洋食屋を色々食べ歩いてみたものの、
老舗の店構えに甘えを感じざるを得ない店が多く、
グラタンやシチューで有名な洋食を頂いた東銀座を過ぎて
いよいよ銀座へ到来してしまった。
洋食は店の雰囲気が重要な、過去の庶民的ななつかしさだけの味なのか、
それとも今も残るには訳のある旨さがあって現在に至るのか、
蚯蚓の疑問は解けぬまま、銀座の名だたる店を食べ歩いてみようと思った次第である。
銀座三越裏の洋食店である。
真夏ではあるものの店のあらゆる窓を全開にして風を通し、爽やかな心地のする店である。
通された2階席もツタが店に入り込んでいたりと実に自然体で、
雰囲気は文明開化よろしくの鹿鳴館を彷彿とさせる。
メニューはやはり銀座価格で躊躇するところもあるが、
定番のビーフシチューやカニコロッケ、グラタンをカルトで発注。
サラダもあわせて発注した。

カニコロッケはさらりとした衣に程良く入ったカニの身が心地よい
しっかりしたホワイトソースが定番を思わせる味わい。
タルタルソースも手作り感があって暖かみがある。
ビーフシチューも肉の軟らかいバランスのとれた旨味が印象的。
童心に返る心地のするグラタンは銀のコキールに盛られ、
表面が一瞬東銀座のグラタンを彷彿とさせる甘味をほのかに感じる。
またコキールに敷かれた米の食感やら美味しさがホワイトソースに絡んで来て、
日本人にはたまらない絶対うまいと思わせる黄金の組み合わせとして
ついつい食べてしまう一品。

ワインがブドウジュースのようで古風でうまいなど、
頑なにむかしの味わいを守っているのかもしれないが、
正直値段の割にうまかったとは言い難い。
ひょっとしたら、その日お勧めであったエビフライなどが
定番より美味しかったのかもしれないが、定かでない。
これはまた機会のあるときに、追記する必要があると感じている。
またサービスマンの表情乏しい雰囲気はなんとも心ぐるしいところで、
色々食べ歩いている蚯蚓としては質こそ違えど、
今ひとつ凛としない人形町と同じ類に感じてしまう店であった。