高円寺の駅南側からしばし歩いたところに、グラタン専門店がある。
店構えは一見すると古めかしい喫茶店のようであるが、
メニューをみるとグラタン、ドリアなど、ホワイトソース大活躍の料理が
具材を違えて楽しめるようになっている。
ベーシックなマカロニグラタンを発注してもよいのだが、
この時期ならではの牡蠣のものを食べたい気分であった。
1件を除き、振られっぱなしの人形町の洋食屋めぐりの中で、
気になっていた「コキール」がここにもあった。
そのため、蚯蚓はホタテのコキールを発注。
また、連れ達は牡蠣のグラタン、シーフードドリアなどを発注。
「コキールとは何ですか?」料理が来た時にマスターに尋ねると、
「この貝殻のことだよ。」と談。
料理というより、このような貝殻に乗せた料理に「××のコキール」と名づけるようだ。
その際、通常のグラタンと異なり、ワインで具材を蒸すなどちょっと凝るらしいのだが、
基本的に「コキール」とは料理法というよりも、鍋焼きうどんでいう「なべ」みたいな
もののようだ。謎は解けた。

果たして、そのホタテのコキールであるが、
ホワイトソースの周りにマッシュポテトでもんじゃの如く”土手”が作られており、
これがほろ甘くて美味しい。
しかも、ホワイトソースにはホタテの香りが染みていて、実に旨い。
生乳のコクのある感じが際立つわけでもなく、だからといって玉葱の甘味が立ちすぎている
わけでもなく、実にバランスの良いホワイトソースで、
味わい深いながらも飽きが来ず、食後ももたれない。
牡蠣のグラタンも然り。当然シーフードドリアも旨いのだが、
ドリアはいささか量が多そうである。
グラタンの器は正当なグラタン皿の長丸で、見た目も味も思い描く理想のグラタンである。


古風な喫茶店めいた店なので、ライムゼリーも勢いで食後に発注。
色から想像できるチープな味。
しかし、食べると口がさっぱりするので、この食事の後、この店で一口だけ頂くのは
ノスタルジーを堪能する観点から行くとセーフかもしれない。
・・・グラタンは実にベーシックに美味しいので、この寒い冬また足を運びたい。
