このところ下町では寿司やら蕎麦ばかり頂くことの多い蚯蚓であるが、
平日ののどかな昼下がりに奥浅草で良い匂いを漂わせていたため、
店を探す足を止め、入ってみた次第である。
中は黄色い壁がなんとも心地よい、落ち着いた雰囲気の店で、
サービスマンの青年がメニューを丁寧に説明してくれる。
好物のホロホロ鶏のローストが丁度あったので、そのランチコースを発注。
スープを加えることが出来るということで、それも付け加えた。
魚のすり身とピザソースのようなトマトソースの冷たい突き出しは
はんぺんにピザソースをかけて焼いて冷やしたような味わい。
繊細さというよりははっきりとした旨味でパンチの効いた
軽いビールが飲みたくなる一品。

サラダはフェンネルなどのハーブも入った、風味豊かな一品。
小降りのパンは伸びやかな皮の胚芽系のパンで、
一緒に出されたオリーブオイルと実に良くあって、
素朴でおいしい。
サラダの酸味とこのパンで朝食を日々迎えたい気分になる。

スープはトウモロコシの冷たいスープで、
コーンの粒のしゃりしゃり感が残る甘い風味の中に時折、
ブラックペッパーの潰した粗い粒ががりっと来ると
胡椒の香りとスパイシー感で、口がリフレッシュされて、
飽きずに頂けるベーシックな一品。

メインのホロホロ鶏のロースト皿は、ピーマンの青い香りが皿の上にまず乗っていて、
表面の皮目をカリッと焼きながらもそのすぐ下からは肉汁と脂がぶわっと吹き出す
ジューシーな仕上がりでなかなか旨い。
付け合わせの野菜がきちんとした仕事で、オクラやピーマン、スナックえんどう、
カブ、ヤングコーンなどいずれもその野菜が本来持つ甘味が食感を損なうことなく
引き出されていて気分良く鶏と頂ける。

超一流の一腕凝った新しい味覚を感じさせる仕事ではないものの、
野菜の始末など見てもひとつひとつの基本のきちんとした
始終安心して頂けるプロの丁寧な皿のつくりで値段の割の美味しさは十分といえる。
浅草という下町のはずれにぽつんとある隠れ家のようなこの店は
昼間にビールの飲める機会を見計らって、食べに来たいところである。
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