ストップをかけるまで、お任せで小皿を出す
有名な薬膳中華料理屋である。
駅の地下飲食店街にあるこの店は、人気店のせいか、
店の外にまで机を出して客を入れる活気ある店である。
中に入ると広い厨房に腸詰やら脚だの何だのがぶら下がり、
ひげを少し蓄えた姿勢のよい紳士風の男性が鍋を振る。
飲み物のみを発注し、皿が出るのをしばし待つ。
一皿目は定番のユリの蕾の炒め物である。
インゲン豆のさやの部分の心地よい香りや
火を入れた野菜の甘い旨味がするユリの蕾が、
動物脂のふんわりとした香りに包まれて美味しい一品。

イカとレモンの炒め物もレモンの皮のほろ苦い香りが
印象的なさっぱりといただける一品。

鹿のハツとセロリ、葱の炒め物はオイスターのような
XO醤のような旨味と香りが心地よく、
食感良くいただける一品。

海老団子の湯葉炒めもとろみのついた醤油風味が
湯葉によって柔らかみをもち、揚げた海老団子に
絡み付いて旨味十分でいただける一皿。

特筆すべき料理の最後は鹿肉の揚げ焼き。
ナッツの衣で揚げた鹿肉は水分が抜けぬまま、
ほっくりしつつ、外のナッツ系の香ばしさと食感で、
楽しくおいしく食べる事が出来る。
数切れはそのまま食べて、口が飽きてきたら、
手前の中華山椒と塩を軽くつけて食べるとまた食が進む。

ついつい次に何が出てくるのかという期待感で、
もう一皿食べてみようとなってしまうが、
最後に食べるクロレラ麺の量が非常に多いので、
ここでストップ。
とはいってもこのクロレラ麺を待つ間に、
どんどん腹が膨れて出されたころには、どうにもならず、
軽く口をつけた後に頭を下げて、包んでもらうことにしている。

最近ジビエブームなどで鹿肉を食べることのできる店は増えたものの、
お任せとはいえ、薄味のものからだんだんしっかりした味へ
シフトさせるなど、見えない心遣いをしつつ、
鹿素材を中華料理として出すところはまだ少ないといって良い。
炒め物が比較的多いので、毎日という気持ちにはならないものの、
また頃合をみて、食材を堪能しに来たいと思った今日この頃である。