けんちんが有名らしく、昼の混雑期には短い昼休みの時間を気にしつつも
列を作ってその順番をまつ客でにぎわう店である。
最近蕎麦が食べたくなることの多い蚯蚓は、ざる蕎麦にしてしまおうかと思いつつも、
人気のけんちんと饂飩にまで助兵衛心が高じて惹かれてしまい、
2色盛りに、けんちんを発注。ほどなくしてざるが来た。
普通にいただくつゆは関西風とも思わせる白醤油仕立てのようで、
色が薄く鰹出汁がかなり濃い。
薬味は葱、わさび、生姜に加えて、白胡麻、紫蘇など種類が豊富。
この旨味も塩っ気も強いつゆには葱などの薬味をふんだんに使って
蕎麦や饂飩をすする方が塩梅良くいただける。

蕎麦は普通のものより太めで田舎と更科、饂飩の3種類を足して3で割ったような
平均的な味わい。
つゆはつややかでコシの強い饂飩との相性の方が良いような印象を受ける。
目当てのけんちんは粘りけと煮くずれぎりぎりの里芋や牛蒡、葱などがふんだんに入った、
軽い味噌仕立てだが、焼き餅を入れたような芳ばしい香りが印象的で、
蕎麦はこちらに浸けていただく方がしっくりきた。
しかしながら、冷たい蕎麦を暖かいけんちんに入れるため、
急速にぬるくなるけんちんと共に蚯蚓の食欲もいささか冷めてしまった。

蕎麦屋と銘打ってある店であるが、むしろ饂飩の旨さのほうが分かり易く、
ざる蕎麦を目当てにはしない方が良いようである。
今度来るときは温かいけんちん蕎麦、もしくは饂飩を頂きたいところである。