店の表には山菜が入りましたという張り紙がしてある。
いつも通り、80過ぎには見えないお母さんが一人、店を切り盛りしている。
カウンターの大皿をのぞいて、早速じゅんさいを発注。
ビールでのどを潤す間に、さっとゆがいて甘酢の小皿で出してくれた。

柔らかい甘みと酸味、軽く醤油と生姜で味を調えた酢の物は
新鮮でまわりのゼリー質部分がとろっとしつつ、
噛むとしゃきっとした歯ごたえがあって実に旨い。
はたはたの焼き物も干物になっていて、旨味がほのかに増して、
むっちりした食感で酒が進む。
大根と塩鮭を甘辛く炊いた皿も酒粕が加えられ、塩気は強いが、酒のあてには良い。
この酒粕も秋田のものらしく、味噌のかわりにキュウリにも付けることを勧められた。
頂くと、普通の酒粕よりずっと旨味が強く、酒臭さがそれほど来ないので、
なかなか面白い感覚でキュウリを頂くことができる。


日頃の仕事のことでどうにもやるせない心地で店に入った蚯蚓であったが、
お母さんの穏やかな話と日本酒でほどけていく日であった。
山菜は本日端境でじゅんさいしかなかったが、今週にはまた秋田から来るらしく、
今度はそれを楽しみに、また足を運びたいところである。