いつもながらの街の徘徊で探した一軒である。
多くのお店は「秋田料理の店」と書いておきながら、
メニューが全国津々浦々で肝心の秋田県のものといえば
日本酒しかなくてがっくりすることが多いのだが、この店は家庭的な秋田の料理が
メニューの大半を占める。
中は狭い思いで横丁の店くらいのカウンターのみの店で、
おばあさんというか、お母さんと呼んだ方がいいのかいいか迷う年回りの女性一人で
この店を切り盛りしている様子。
取り敢えず、瓶ビールでのどを潤しつつ干したはたはたや生の鶏肉、
その他大皿に盛られた料理の中から、たらこの和え物を発注。
ゆっくりとしたテンポながら無駄のない動きでさっと小皿に盛ってくれる。
このたらこ、よくおにぎりに用いるような塩漬けされたものではなく、
生の味付けされていないたらこで、いくらのように酒と醤油でつけたり、
この料理のように煮付けたり、東北地方ではよく食卓に上がるものである。
そのようなお母さんの十八番ともいえる素材で調理された小皿は無論美味しい。

秋田話で花が咲き、次に発注するものは何が良いか話の流れで聞くと、
比内地鶏が良いと云う事で、発注。
何の変哲もないフライパンで焼いただけなのだが、
比内地鶏自体が美味しいとしか思えないほど、肉の旨味や甘味がしっかりして、
食感も良く実にうまい。
炭火で焼くなど何もしなくてなぜここまでうまいのか尋ねると、
どうも肉は秋田の親戚から取り寄せていたものだったり、焼く塩は岩塩をすりおろした
粉末状のものを使用しているとの事で、納得がいった。

今後は山菜が来たりするという話なので、
この秋田からの取り寄せメニューを足繁く通って、今後は堪能していきたいと思う。
このような地味ながら、通常の比内地鶏より美味しい比内地鶏を堪能できるだけでなく、
のんべえの心の分るお母さんの作る心地よいこの店で、ゆったりと過ごしたいものである。
お店の場所はこちらです。