人形町駅A4出口を出て、大通りより一本中に入った道をはこぢんまりとしたたたずまい。
茶色が印象的なアンティークな雰囲気を漂わせる内装で、
客席数は20も満たない落ち着いた雰囲気。
メニューはタンシチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスなど
ドミグラスソースを使ったものがぽつぽつ。
本日タン入荷がないためタンシチューは「お休み」とのこと、
そのためビーフシチューを発注。
瓶ビールが1本開く結構時間の経った頃、底の深い土鍋風の器に入ったシチューが来た。
大きく面をしっかり取ってある人参、じゃが芋、いんげん、里芋等、
ごろっとした野菜と牛肉の入ったこのシチューは、
スープを飲むとトマトをほのかに感じるベーシックな味わいがしっかり来て、
煮込んで煮込み倒してほろ苦い旨味を含んだ奥深さが前に来る濃厚な味と言うよりは
野菜の旨味がしっかり凝縮されて出来た、だけどさらりとしすぎてもいない
最も平均的な旨味といった味わい。

このようなシチューだと肉や先述の野菜は別に仕込まれて、最後で合わせるため、
肉の始末が甘かったり、合わせてからの煮込みの時間が短かったりして
スープとの融合感に欠けてちぐはぐな皿を仕上げとして出す店もあるのだが、
待たせる最大限の時間まで粘って煮込んでいるようで、
肉とスープのまみれ具合は良く、美味しい。
野菜は敢えて野菜の味を活かそうとしているのか、食べると野菜はスープより
その素材の味が先にくる。
ごはんや合わせのサラダが丁寧に作られていることのみならず、
定番メニューが出せない表現を柔らかい言葉で伝えたり、出てきたシチューの器の雰囲気、
落ち着いた店の内装など、そこかしこに気張らず心地よく食事を頂ける要素が嫌みなく
この店には存在している。
また、今度きちんとした皿で発注した際に特筆したいと感じたのが、ロールキャベツである。
今回単品で発注したロールキャベツはシチューが標準的に美味しいとすると、
標準よりも一歩前に出た美味しさを持つといえる。

ここまで標準的な味わいを出されると、いささか新しい感覚の美味しさ発見という観点では
物足りなさもあるが、ロールキャベツの一歩前に出た美味しさなどを考慮すると、
丁寧に色々なメニューを味わってみたくなるお店であった。