両国橋へと続く大通り沿いに、一軒暖簾たなびく店を発見。
気になって店の前へ近づくと、「おにぎり」と書いてある。

小料理屋のような店構えでありながら、おにぎりという物珍しさが手伝って、
中へ入ってみる事にした。
座敷の席と半端なカウンター席がある。
席数が結構あるのだが、おかみさんひとりでどうやらきりもりしているらしい。
メニューはおにぎり以外にもちょっとつまめるようなものがあるが、
試しに漬物と鮭おにぎり、梅干入り焼酎お湯割を発注。
粒うにのおにぎりにも惹かれたが、ベーシックなメニューで様子を見ることにした。
程なくして全てが揃い、お湯割りを一口。
梅がうまい。最近の時を待てずに出汁の味をつける梅とは違い、
素朴で年月を経ないと塩が枯れて出てこない旨味がこの梅干にはある。
型で押して作られた形の良いおにぎりも鮭にぎりだというのに、
雲丹のような香りが乗って、なかなか美味しくいただける。
しば漬けも紫蘇の味がする品のいいもので、ヤマゴボウは塩っ気が濃く、
最上の品質とまではいかないが、しっかりゴボウの味がして酒が進む。

このお店の良い所は、長くからこの場所でひっそりとおにぎりやを続けている事で、
たとえば、ちゃんこならここがいいとか、400年も続くしゃもを食べさせる店が
近くにあるだの、以前、記事にした両国のラーメン屋の場所は
その前に2件数ヶ月で立て続けに店を閉めてざるを得ない位に
何故か店がうまくいかない「いわくつき」の場所だとか、そんな地元話をしてくれる。
この界隈が店を閉めた後の深夜まで店を開け、
はしご酒の客を優しく迎えて色々話をしてくれる懐の深さをこの店に垣間見た。
是非、両国で一杯引っ掛けた後の〆に立ち寄りたい店である。